森に小さな火のようせいがいました。誰も気づかないほどの、誰の目にも見えないほどの、小さな小さな火です。
小さな火は、ひとりぼっちです。だから、いつもさびしい毎日を過ごしています。
そんなある寒い日のこと、 森の中で小学生の男の子が迷子になって歩いていました。
男の子は小さな火と同じで、いつもひとりぼっちでした。
冷たい雨と寒さから、ほら穴にのがれた男の子を小さな火は守り、励まします。
森の決まりを破ってまでも。
そんな小さな火と男の子との友達物語です。
記念すべき最初の電子書籍です。
4年前、電子書籍を始めるために、初めてパソコンを買いました。教えてもらいました。覚えました。で、電子書籍。もう何が何だかわからなくて、毎日てんやわんやの大騒ぎでした。
電子書籍を始めようと思ったきっかけは、400以上(?)ある作品をこの先どうしようかと考えたことと、作品を収めたフロッピーディスクが壊れたこと。これはなんとかしないとまずいぞ、と……。
というわけで、以後ほぼ33ヶ月連続でwookから出版しました。
この作品自体は、2007年に書いたものです。それに、現在ネイリストであるさいとうのりえさんに絵を描いてもらいました。とても温かく、優しい絵を描いてもらえて感謝しています。
いろいろな意味で印象深い作品です。
売れない絵かきがいました。
絵かきはオウムと二人ぐらし。まずしいながらも、仲良くくらしていました。
ある晴れた日、ふたりは街へ散歩に出かけました。
そして、一けんの古いおもちゃ屋さんで、ブリキのおもちゃを見つけます。
ブリキのおもちゃは、「がんばれロボット」といって、落ちこんだり、元気がなかったりすると、「がんばれ、がんばれ」とはげましてくれます。
そして、その後、三人はいっしょにくらすようになります。
ところが、ある日、なっとくする絵がかけない絵かきは、ついイライラして、がんばれロボットをかべに投げつけてしまいました。
ロボットはこわれて動かなくなってしまい……。
この作品は、自分の中で以前から違和感のあった言葉、「がんばれ」を払拭したくて書いた物語です。何となく他人事のようで、空々しい気がして。
周りから「がんばれ」と言われる度に、「これ以上、どうがんばれというんだ」と思っていたんですね。
そんな自分を何とか変えたかった。
物語の最後の方で、おもちゃ屋さんの店主が、「『がんばれ』は人をはげますだけの言葉じゃない。『君は決してひとりじゃない』といういみの言葉でもあると思う。その言葉を言ってくれる大切な人がそばにいるってことだから」というセリフがあります。
そう解釈すると、「がんばれ」も素敵な言葉だなと思います。
この作品も、さいとうのりえさんにお願いして、絵を描いてもらいました。ほんと、いい絵をいただきました。ありがとうございます。
2010年完成。