金子さんは人里離れた森の国道沿いに、「かねこ工房」という小さな工房を営んでいます。
自ら作った木工製品を販売したり、オーダーメイドで椅子や家具、テーブルなどを作ったり。
金子さんが作るものは全てシンプルなデザインですが、それがものすごくかっこよく、機能性にも優れているので、多くのファンがいます。
金子さんは1つ1つの製品をとても丁寧に作るので、注文して1年も待つこともありますが、ファンの人達はその待ち焦がれる時間さえも楽しんでいるようです。
金子さんは40代の男性で、独り身です。縁あって、この地には5年前に移り住みました。それまでは、ヨーロッパやカナダの工房を転々として、職人としての腕を磨いてきました。
さて、ある日のこと。
金子さんがいつものように森の散策から戻ると、ログハウス造りの「かねこ工房」の前に、この辺りでは珍しい品川ナンバーの車が停まっていました。
そして、やはりこの辺りでは珍しい立派な背広を着た30代の1人の男性が、工房の中をうかがっています。
実は、この男性、かなりの訳ありでして……。
そして、金子さんに勧められるままに中に入った男性は、工房で不思議な積み木を見つけました。
金子さんに言われるままそれを耳に当ててみると、かすかな歌声が聞こえてきて……。
この作品は、妻を亡くして幼子と暮らしている男が、偶然に「かねこ工房」を訪れ、金子さんと知り合ったことによって、心が救われていく様子が描かれています。
また、この作品には他にいくつかストーリーが出来ているので、もしかしたらシリーズもので書けるのではないかと、自分でも期待しています。
ま、実際は他に書きたいことがあるので、書く予定はないですが。
そんなのばっかりです。
さて、最近はたと気付きました。
今まで書いた作品で、主人公が独身で不器用で、ちょっと変わり者が多いことを。
はて。これって、もしかして自分のこと?
いや、違う。絶対に。
そう思いたい。
2016年作。