俺のポケットが彼女のポケットと繋がっているという事実

(2017年2月出版)

 ハタチの俺は普通の大学生。

 特別やりたいこともないし、現状で充分満足している。

 だから、何かにチャレンジしたいとは思わない。

 そもそも全力で頑張ることはしない。

 今までだって、全て程々に頑張ってきた。

 例え失敗しても、自分にも他人にも言い訳できるから。

 本気じゃないから、って……。

 傷つくことは嫌だし、ずっとそうやって自分自身を守って生きてきた。

 そんな俺にも彼女がいる。

 同じ学部のまお。

 まおとは、入学式で偶然隣同士になって知り合い、すぐに意気投合して付き合った。

 俺が言うのもなんだが、まおは大学の中で1番可愛いと思う。

 結婚したいとも思っている。

 勿論具体的に考えている訳ではなく、それくらい大切だし、好きだということ。

 まおは「そんな大事なこと、簡単に口に出さないで」と珍しく機嫌を損ねてしまったけれど。

 でも、俺の気持ちは本気だ。本気で結婚したいと思っている。

 

 ある日の夜、バイト先のカフェからアパートに帰る途中、何気なくズボンのポッケに手を突っ込んだ俺は、妙なものを発見した。

 1本のチュッパチャプス。しかもまおのお気に入りの抹茶ラテ味。

 全く身に覚えがなかった。

 その後も俺のズボンの右ポッケには、チュッパチャプスは勿論、ガムやレストランやカフェのレシートなどが入っていた。

 そして、俺はそれが全てまおのものだということに気付いた。

 俺のポッケとあいつのポッケが繋がっているなんて……。

 そして、そのことがきっかけで、俺とまおには大きな試練が訪れることになり……。 


 久し振りの大学生が主人公の物語。

 きっかけは、ある日、ポケットに入れたはずのカギが見当たらなくなったこと。

 もしかして、誰かのポケットに瞬間移動したのかも……。

 と、本気で思ってしましました。

 もっとも、勘違いでしたけど。

 でも、もしかしたら……。

 そんなくだらないことを冗談半分で考えていたら、何となくストーリーが出来上がりました。

 大学生の頃、一体何を考えていたんだろう……。

 そんなことを思いながら、意外と楽しい気分でサッと書き上げました。

 ま、あんまりたいしたことは考えていなかったと思いますが。

 この作品は今年書いたものです。

 急遽予定を変更して、2月に出版しました。