かつてムジャキな子供だった人達への童話11(2021年6月出版)

てるてる坊主とかたつむり

 6月のある日のことです。

 雨がしとしと降っています。

 昨日も今日も。

 このところずっとです。

「よく降りますねえ」

 ベランダにぶら下がっているてるてる坊主が言いました。

「そうですねえ」

 ベランダの手すりに座っているかたつむりが言いました。

「ぼくは雨がきらいです」

 てるてる坊主はそう言って、うらめしそうに雨空を見上げました。

 かたつむりはというと、雨が好きです。

 でも、つのをニョキッと出して、てるてる坊主と一緒に空を仰ぎました。

 そんなふたりの友情物語。


 こういうほのぼのしたお話は、作っている時も書いている時も優しい気持ちになれます。

 きっとその時の自分の心の健康状態もいい時なのでしょう。

 やっぱりね、そうじゃないと書けません。僕の場合。

 2007年作。

動物園が大変だ!

 た、大変です。

 動物園が大変なのです。

 お客さんがぜんぜん来ないので、へいさするかもしれないというのです。

 カラスくんの提案で、動物の親たちは街に出てアルバイト。

 自分の食事代をかせぐためです。

 一方、留守番の子どもたちはというと、なぜかみんなででんぐり返しをして……。

 でも、それが思わぬ反響になって……。


 動物園の動物達って、野生の本能は持っていると思いますが、野生では生きていけませんよね。

 そして、一生エサをもらいながら、保護されながら生きていく。

 その点、カラスは自由です。

 でも、自由だからこそ、常に危険と隣り合わせで生きている訳で……。

 何か哲学的になってきたので、この辺で。

 2009年作。

白い犬ゴン

 ユキオ君は、学校が大好きな小学校5年生の男子。

 ユキオ君は太っちょです。だから、運動が苦手です。それに、勉強もあまり得意ではありません。

 それでも、いつもニコニコ笑っていて、クラスみんなの人気者です。

 ちなみに、あだ名は「ゴン」です。

 そんなユキオ君が小学校に登校する際、横断歩道を渡っている途中、交通事故にあってしまいました。ちゃんと手を挙げて渡っていたのに……。

 天国に旅立ったユキオ君は、朝から晩まで泣き続けました。天国の神様はホトホト困ってしまい、特別にユキオ君をもう一度だけ地上に帰しました。白い犬に姿を変えて……。


 時々どうしても書きたくなる哀しいお話。

 「別れ」や「死」。

 辛いけど、生きている以上、避けては通れないこと。

 そして、それらを何とか乗り越えていかなければいけない。

 その時はやはり、「時間」や「仲間」がその哀しみを癒してくれるのだと思います。 

 2006年作。

くもさんの毛糸のマフラー

 10歳のまおちゃんは、大好きなママの誕生日にクリーム色のマフラーをプレゼントしようとしました。

 でも、毛糸は買ったものの、まおちゃんはあみ物ができません。

 ある日、自分のお部屋で学校の宿題をしている時、丸い消しゴムが転がって、押し入れに入ってしまいました。

 そして、そこには指くらいの小さなマフラーと1ぴきのくもさんがいました。

 マフラーはくもさんがあんだものです。

 まおちゃんはくもは苦手でしたが、あまりにもそのマフラーがすてきだったので、くもさんにあみ物を教えてくれるように、しんけんな顔で何度もたのみました。

 こうして、まおちゃんはコーチのくもさんに教えてもらいながら、マフラーを完成させました……。


 母の影響でしょうか、昔からむやみに生き物を殺すのはちょっと……。

 勿論ゴキブリや蚊などは殺しますが。

 それがモチーフになったお話です。

 2009年作。