ここは、ツガノ公園。
住宅街の中心部に位置しているため、いつも多くの老若男女で賑わっています。
特に3時を過ぎると、学校を終えた小学生が集まって、みんなで元気に仲良く遊びます。
そうなると、太郎君の出番です。
太郎君は長年の間、「ツガノ公園の大統領」と呼ばれています。42歳ですが、知的障がい者で、精神年齢は10歳程度です。
そのため、いつもこうして小学生のお友達と一緒に遊んでいます。
そう、太郎君は小さい頃からずっとこの公園で大好きなお友達と遊んでいるのです。
そして、1番年上でもあるので、子供達に公園でのルールも教えています。みんなが一緒に楽しく遊べるように。
時々、お小言も言って。
ある日、ツガノ公園に1人の小学生の男の子が姿を見せました。
名前は海辺つなぐ君。
つなぐ君は転校生で、お母さんが厳しい上、体が弱く、習い事で忙しいため、みんなと遊ぼうとはしませんでした。
でも、偶然に公園で太郎君と2人きりとなったつなぐ君は、短い時間でしたが、無邪気に子供らしく遊びました。
そして、そのことがきっかけで、他の子とも仲良くなりました。
その後、つなぐ君はお母さんに叱られても自分の意志で公園にやってきて、みんなと遊ぶようになりました。
明日も明後日も、ずっとずっとお友達と遊んでいたいなァ……。
大統領である太郎君は、そんなみんなを見守りながら、そんなことを思いました。
ところが、ある日、ツガノ公園で悲しい出来事が起こりました。
楽しい場所であるはずのこの公園で……。
街中のみんなが涙するほどの悲しい出来事が……。
この作品も児童文学。
こういう作品を書くと、やはり童話も児童文学も自分の基本のような気がします。
物語の後半の夜の公園シーンは、きっと満足してもらえるのではないでしょうか。
何となく時代的に、子供も大人も「俺は正しいんだ。自分さえよければいいんだ。勝手だろ。文句あっか」という風潮が、以前よりも強くなってきている気がします。
余裕がないからなのでしょうか。
そういう時代になると、やはり誤解や偏見が生まれやすくなるようです。
自信と慢心は違います。
自分自身も気を付けたいと思います。
太郎君のように、誰にもできるだけ優しくありたいと思います。
2016年作。