ボクは看取りロボット。
人間が亡くなるのを見届けるのが仕事。
ボクは話せません。
表情も変わりません。
どんな辛いことがあっても。
そして、ロボットなので死にません。
人間には寿命があるのに、ボクにはそれがないのです。
だから、いつも人間の死を見届けます。
いつだって、後に残されて、悲しみだけを背負うのです。
何度も何度も……。
何人も何人も……。
そして、思い出とともに生きるのです。
ずっと……。
ずうっと……。
「あら、何かしら」
夜遅く、帰宅途中のおばあさんは路上に落ちているロボットを拾いました。
それは手のひらに乗るくらいの小型の人型ロボットで、随分と汚れていて、全く動きませんでした。
「こんなに汚れて、かわいそうに……」
おばあさんはロボットを抱いて家に帰りました。
そして、動くようになったロボットに「かっくん」と名前を付けて、一緒に暮らしました。
しかし、おばあさんは倒れてしまって……。
ある日、男の子が病院に行く途中、歩道の花が植えられているところでロボットを見つけ、そのまま入院中のおじいさんのところへ連れていきました。
おじいさんは一人娘と訳あって縁を切っていますが、孫の男の子は毎日のようにおじいさんの元へ訪れます。
おじいさんは本当は娘さんとも仲直りしたいのですが、素直になれず、つい男の子にも意地悪なことを言ってしまいます。
そして、ある日、大切な孫とも口ゲンカをしてしまい……。
「孤独なおばあさんと」は以前メディバンで出版した「大人のための小さな物語1」に収めていた作品です。
それに、「ガンコなおじいさんと」を加えて今回出版しました。
この作品は近い将来そういう時代が訪れるだろうな、と思いながら書きました。
A.Iのロボットが人間を癒してくれる時代。
「怖い」と言う人もいますが、個人的にはおもしろいと思いますけど。
表紙はみずきさん。
イメージを超えるほんのりとしたロボットの顔です。
さすが。
2015年作。