看取りロボット1           (2019年6月出版)

 ボクは看取りロボット。

 人間が亡くなるのを見届けるのが仕事。

 ボクは話せません。

 表情も変わりません。

 どんな辛いことがあっても。

 そして、ロボットなので死にません。

 人間には寿命があるのに、ボクにはそれがないのです。

 だから、いつも人間の死を見届けます。

 いつだって、後に残されて、悲しみだけを背負うのです。

 何度も何度も……。

 何人も何人も……。

 そして、思い出とともに生きるのです。

 ずっと……。

 ずうっと……。

 

「あら、何かしら」

 夜遅く、帰宅途中のおばあさんは路上に落ちているロボットを拾いました。

 それは手のひらに乗るくらいの小型の人型ロボットで、随分と汚れていて、全く動きませんでした。

「こんなに汚れて、かわいそうに……」

 おばあさんはロボットを抱いて家に帰りました。

 そして、動くようになったロボットに「かっくん」と名前を付けて、一緒に暮らしました。

 しかし、おばあさんは倒れてしまって……。

 

 ある日、男の子が病院に行く途中、歩道の花が植えられているところでロボットを見つけ、そのまま入院中のおじいさんのところへ連れていきました。

 おじいさんは一人娘と訳あって縁を切っていますが、孫の男の子は毎日のようにおじいさんの元へ訪れます。

 おじいさんは本当は娘さんとも仲直りしたいのですが、素直になれず、つい男の子にも意地悪なことを言ってしまいます。

 そして、ある日、大切な孫とも口ゲンカをしてしまい……。


 「孤独なおばあさんと」は以前メディバンで出版した「大人のための小さな物語1」に収めていた作品です。

 それに、「ガンコなおじいさんと」を加えて今回出版しました。

 この作品は近い将来そういう時代が訪れるだろうな、と思いながら書きました。

 A.Iのロボットが人間を癒してくれる時代。

 「怖い」と言う人もいますが、個人的にはおもしろいと思いますけど。

 表紙はみずきさん。

 イメージを超えるほんのりとしたロボットの顔です。

 さすが。

 2015年作。