かつてムジャキな子供だった人達への童話5         (2015年4月出版・2019年7月再出版)

月がとってもきれいな夜だから

 月がとってもきれいな夜だから。

 素直な気持ちでこう言える。

 好きだよ……。

 ありがとう……。

 ごめんなさい……。


 これもとても短い物語。

 夜、ぼんやりと月を眺めていると、何だか素直になれますよね。

 そんな作品です。

 2015年完成。

流れ星パックンのお仕事

 流れ星パックンは夜間の郵便屋さんです。

 夜になると、星から星へと荷物や手紙を配達しています。

 パックンはあまり足が速くありません。

 だから、よく人間にお願いごとをされます。

 その願いを叶えてあげるのも、流れ星の大切な仕事です。

 しかし、近頃人間は自分で頑張ろうともしないで、パックンにお願いばかりしています。

 それも、自分勝手なものばかりで……。


 流れ星を見かけると、慌てて手を合わせてお願いをしますよね。

 でも、あっという間でなかなか間に合いません。

 そんな流れ星のお話です。

 これも、とても優しい物語になっています。

 2006年完成。

湯たんぽニャンコ

 冬の、ある寒い寒い日のこと。

 貧しい画家が凍えながら小さな雑貨屋の前を通りかかると、貼り紙にこう書かれていました。

『湯たんぽニャンコ レンタルします。お金はいりません。寒い冬、一緒にいると温まりますよ』

 ガラス越しの向こうには、一匹の灰色のまん丸く太ったネコが、まあるくなって眠っていて……。


 友達もいない貧しい画家と湯たんぽ代わりのニャンコ・タンポとの物語。

 ふたりはいつでも一緒です。

 ところが、ある日、突然タンポが行方不明になります。

 貧しい画家はタンポの絵をたくさん描いて、街中に貼るのですが、それが思わぬ幸運を招きます。 

 2006年完成。

星の指輪

 ある夜のことです。

 おばあさんの元に、親指くらいの小さな天使がやってきました。

 天使はシクシク泣きながら、「大事なリングを壊しちゃったの」と告げました。

 そして、「そのリングがないと、天国に帰れない」とも……。


 おばあさんの店は、かつてオーダーメイドの指輪の専門店です。

 地上を訪れた天使のために、無料でリングを作ってあげたり、直してあげたりする店でした。

 でも、おじいさんが亡くなってからは店は閉めたままです。

「いつかきっと宇宙に行って、夜空のきれいな星を集めて指輪を作ってあげる」

 これは、おじいさんからおばあさんへのプロポーズの言葉。

 そして、それが遂に実現されます。

 おじいさんとおばあさんの愛の物語です。  

 2006年完成。