かつてムジャキな子供だった人達への童話6        (2015年10月出版・2019年8月再出版)

おはよ

 怖い夢を見た。

 とってもとっても怖い夢だ。

 絶望と孤独、そして暗闇に支配された夢。

 ボクは夢の中で、怯え、泣き叫び、そしてさ迷い、震えていた。もがき苦しんだ。

 

 ふと目が覚めると、目の前にキミの寝顔があった……。


 これもとても短いお話。

 怖い夢を見た直後、目の前に大好きな人の幸せそうな寝顔が見られたら、それはやっぱり幸せなことですよね。

 羨ましいです……。

 2015年完成。

屋根のあるベンチ

 遠い昔。

 バス停の前で、1人の女性が毎日毎日ただひたすらに、大切な人を待ち続けていた。

 やがて、そこにはベンチが置かれ、屋根も作られます。

 誰が作ってくれたのかは、わかりませんが……。


 これも短いお話。セリフなしです。

 愛する人をただひたすらに待ち続ける女性。

 そして、再会。

 でも、屋根のあるベンチは一体誰が……。 

 2015年完成。

時間

 た、大変です。

 時間が悪魔によって奪われました。

 時間を手に入れた悪魔は、人間を困らせようと、様々な悪事を働きました。

 そして、何も知らない大人達は悪魔にあやつられ、心身ともに疲れ果てています。

 そんな悪魔をやっつけたのが……。


 これは現代人をかなり皮肉った作品です。

 どこへ行っても時計が置いてあり、しかも自ら所持している。

 そして、毎日時間に追われて生活している。

 もしも時計がなくなったら、どうなるんだろう……。

 もしかしたら、誰か(神様? 悪魔?)が時間を支配して、私達を操っているんじゃないだろうか……。

 そう思って、作ったお話です。

 2006年完成。

駐在さんの帽子

 ここは小さな南の島。

 この島にある唯一の十字路の交差点の脇に、今日も駐在さんが立っています。

 そして、その隣りには、いつもかかしの姿があります。

 駐在さんは心優しく、島の人に慕われていますが、かかしは意地悪なので嫌われています。

 そんな対照的な2人ですが、やがて友情が芽生えていき……。


 これは、駐在さんとかかしのお話。

 駐在さんがいつも交差点の脇に立っていた理由。

 それは10年前の、ある事故がきっかけでした。

 ラストで駐在さんに帽子を託されたかかしが、それを被り、交差点の脇に立ちます。

 駐在さんの想いかみしめて……。

 2004年完成。