ぼくの名前は、「ゴールドメダル」。
地方競馬の競走馬です。
毎日きびしい勝負の世界に生きています。
ぼくは走るのが大好き。
でも、あまり速くありません。
もう100回以上もレースをしていますが、一度も勝ったことがありません。
「おい、ゴールドメダル。いつになったら、本物のゴールドメダルがもらえるんだ!」
時々お客さんからそんなふうにからかわれたりします。
ぼくたちがいる競馬場がなくなって、ぼくは調教師のゴンさんの紹介で、ホースセラピストのおじいさんの施設に再就職することになりました。
病気やケガで心や体に障害を持った人達を乗せてリハビリするのが、ぼくの仕事。
ぼくにできるかな。
ビリばっかりだったぼくに……。
そして、ある日施設に1人の少女がやってきました……。
モデルは以前100敗以上して話題となった競走馬のハルウララです。
でも、人間だけが1等とかビリだとか言っていますが、走っているお馬さんたちはそんなこと意識していない訳で……。
ただ走るのが大好きで走っていると思います。
それに、人間でも、たとえうまくなくても好きなものがありますよねえ。
もしかしたら、そのことがあの馬が人気だった理由だったのかもしれません。
ちなみに、私は競馬はまったくわかりません。
2008年作。
めぐちゃんは、おとなしくて人見知り。そして、引っ込みじあんです。
だから、いつも男の子にからかわれます。
「なきむし、よわむし、いくじなし」
ある日、めぐちゃんはカゼをひいて、学校を休んでしまいました。
そして、その夜のこと。めぐちゃんが目を覚ますと、まくらもとに小さくて、ふしぎな生きものが3びきいました。
名前はなきムシ、よわムシ、いくじナシ。
3びきはふだんめぐちゃんの体の中にいるのですが、セキといっしょに出てきてしまったのです。
めぐちゃんはふしぎな生きものと出会って、なんだかうれしくなりました。
でも、3びきはめぐちゃんに「さよなら」を告げたのでした……。
「なきむし、よわむし、いくじなし」は決して後ろ向きの言葉じゃない。
そういう想いで書いたお話。
何でもそうですが、表の解釈と裏の解釈がありますから。
「積極的」は、「自己中心的」だったりする訳ですから。
だから、言い方によっては短所は長所であり、長所は短所だったりする。
結局は受け取る側次第でってことですよね。
難しい……。
2009年作。
平和な森がありました。
樹々が立ち並び、きれいな花がひっそりと笑顔を浮かべ、たくさんの鳥が大空で歌っています。
そして、動物たちが幸せそうな顔でお昼寝をしています。
それはたぬきのポコが体の具合のよくないお母さんのために森深くに入って、野いちごを探していた時でした。
突然森中に地面を切りさくような爆音と大きな地鳴りが響きました。
数えきれないほどの大きなブルドーザーとダンプがやってきて、大規模な工事が行われました。
そして、森に大きくて長い道路が造られ、平和な森が分断されました。
こうして、ポコは大好きなお母さんと離れ離れになってしまいました……。
これは高速道路で車と動物が衝突する事故があったという記事を見て書いたお話。
人間が動物の領域にどんどん侵入することによって、こうした事故が起こるのだと思います。
そして、人間はそうすることによって、豊かさを手に入れてきたのも事実。
誰しも間接的にもその恩恵を授かっていますよね。
そう考えると、難しい問題です。
せめて獣道優先の道路があってもいいのかなと思って書きました。
でも、それまでも理想論かもしれませんけど。
2007年作。
それは寒い寒い、ある冬の夜のこと。
オルゴール作りがさかんなこの町で、1人の少女が壊れた箱型のオルゴールを持って、吹雪で吹き飛ばれそうになりながらも、オルゴール屋さんを1軒1軒訪ねました。
しかし、どの店にも断られて、すっかり途方に暮れていると、偶然に元オルゴール職人のおじいさんに声をかけられ、運よく直してもらうことになりました。
そして、直ったオルゴールのゼンマイを巻いてみると、箱の中から優しく切ないメロディーが流れてきました。
それはおじいさんにとって、思い出深い映画「ロミオとジュリエット」の曲でした……。
この作品は昔過ぎて、一体いつ書いたかわかりません。
もしかしたら、初期の初期かもしれません。
もしそうなら、30年以上前?
でも、当時は「いいのが書けた」と思って、自信にもなった作品です。
久し振りに懐かしい作品と再会できました。
うん、やっぱり嬉しいなあ。
ちなみに、箱型ではありませんが、「ロミオとジュリエット」のオルゴール、持ってます。
何十年振りかで聴いてみました。
やっぱりいい曲です。
1997年(?)作。