サンタクロースのおじいさんが家出をしました。
理由は、別な街で弁護士をして暮らしている一人娘のメアリーが何の相談もなしに結婚を決めたからです。
おじいさんは大事な娘を赤の他人に取られる寂しさもあって、すっかりすねてしまい、2人の仲を認めようとはしません。
そして、メアリーが相手の男性を連れて家を訪れた日、九官鳥のキューちゃんを連れて家を出たのです。
おばあさんは、そんな子供っぽい行動をとったおじいさんに呆れ果てました。
さて、おじいさんは家から遠く離れた街にやってきました。
そこは都会で、見るもの全てが珍しくて新しく、年配のおじいさんはすっかり戸惑うばかりです。
そして、ひょんなことからこの街を荒らし回っている怪盗ブラックサンタに間違われて逮捕されました。
翌日、知り合いの署長さんの計らいもあって釈放されたおじいさんは、当てもなく通りを歩いていたところ、少女カレンと出会いました。
カレンは意地悪なおばあさんとホテル兼レストランに暮らしていました。
おじいさんはカレンの勧めもあって、その夜、そのホテルに泊まりました。
ところが、すっかり寝静まった夜、おじいさんとキューちゃんの部屋にブラックッサンタが忍び込んで、おじいさんの財布を盗んでいったのです。
そして、すっかり一文無しになり、宿泊代や食事代を払えなくなったおじいさんは、5日間このホテルで住み込みで働くことになったのです。
サンタクロースだって、人間。つまらないことに怒ったり、子供っぽいこともするはず……。
そんなことを考えていたら、自然とストーリーが浮かんできました。
とはいえ、今から20年前に書いた作品。
正直なところ、どんな想いで書いたのかは忘れました。
でも、久し振りに昔の作品と再会して、読み返してみると、今は思いつかないような発想や表現の仕方などを見つけることができて、何だか嬉しい気持ちになります。
そして、この度出版となりました。
これからも新しい作品を書きながら、古い作品にも目を向けていきたいと思います。
1997年作。