大人のための小さな物語10(2018年3月出版・2019年6月再出版)

ブッラクコーヒー

 ある駅前の商店街の一番はじっこにある、古くて小さな喫茶店。

 ここはおじいさんが一人で切り盛りしていて、訳あって夜だけ開くお店です。

 しかも、営業時間も定休日も決まっていません。

 ある夜、この店に10歳くらいの少年がやってきました。

 どうやら、この少年も店のおじいさん同様、訳ありのようで……。


 店のおじいさんと客として訪れた少年とのお話。

 この店の壁には、昔から恋人同士の落書きがたくさん残っています。

 そして、ラストはなぜ夜だけお店が開くのかが明かされます。

 あえて昭和的な「ブラックコーヒー」という題にしてみました。

 今はもうよっぽどの古い喫茶店でも見られませんよね。

 2005年完成。

うさぎさん、ただ眠っているだけ

 広い広い高原の小高い丘の上。

 穏やかな昼下がり、うさぎさんがベンチに横になって、気持ちよさそうに眠っています。

 そこへ、いろいろな悩みを抱えた動物たちがやってきます。

 そんな彼らに、うさぎさんはムニャムニャ寝言を言うのですが、それがとってもいい寝言でして……。


 たまに書きたくなる、ちょっとふざけた作品の1つ。

 うさぎさんはただ眠っているだけで、ムニャムニャ寝言を言うのですが、その一言が訪れた動物たちの心を和ませます。

 でも、本当にうさぎさんは眠っているのでしょうか。

 2015年完成。

風 kaze

 挿絵作家のあなたが取材先で事故で亡くなった。

 その後、憧れの風になったあなたは、幼子のタケルと飼い犬のチビの前に現れた。

 でも、私には……。

 私には、どうしてもあなたが感じられなくて……。


 挿絵作家の夫とその妻の物語。

 テーマは、やはり「愛」です。

 ん~、羨ましい……。

 ラストは砂絵。

 浮かぶのに、相当苦労しました。

 絵かきを主人公とする物語が多いのは、自分が絵がヘタだからでしょうね。

 ちなみにこの作品、阿部芙蓉美さんの「ブルーズ」というアルバムを何度も聴いて書きました。

 2015年完成。