私が高校2年生の時、突然大好きだった彼女が目の前から消えた。
しかも、それはもう二度と永遠に会えない別れだった。
ろくに眠らず食事も取らず半狂乱になった私を見て、情けなく思ったのだろう。
通夜の時、私はみんなの前で、彼女の父親にぶん殴られた。
そして、言われた。
「娘のことを本気で好きだったのなら、その気持ちに微塵も嘘がないのなら、娘に恥じない生き方をしろ。いつか再会した時、夢でも会えた時に褒めてもらえるような生き方をしろ」
目が覚めた。
私は自分自身を激しく叱責した。恥じた。
そして、少しずつ落ち着きを取り戻した私だったが、それでもどうしようもないくらいにいたたまれない気持ちになった日、私は天国にいる彼女に赤い風船を飛ばした。
「今までありがとう」のメッセージを添えて。
ある日の昼下がり駅前の大きな交差点を歩いていると、目の前に黄色い風船がよぎった。
そして、その風船には黒い文字で、「こちらこそありがとう」と書かれていた。
それは彼女の字に似ていた。
信号が変わり、クラクションがけたたましいほどに鳴り響く中、私はその風船を抱き締めて、彼女を想い、大声を出して泣きじゃくった。
あれから10年の歳月が流れた。
彼女の死を無駄にしたくなかった私は、猛勉強の末、医師になった。
そして、今、大きな総合病院を駆け回って、部屋からいなくなった高齢の末期患者を捜していた……。
風船にまつわる奇跡の物語。
この作品は風船が偶然に見知らぬ人と人を結び付けた奇跡の物語です。
その奇跡によって、それぞれが「生きよう」とするのです。
そして、10年後、再び奇跡が起きます。
いやあ、悩みましたねえ。
確か、ストーリーを作り出す時点でかなり悩みました。
風船にまつわるお話を作るということだけは決まっていたのですが、それからどうつじつまを合わせながら物語を組み立てていけばいいのか。
ただ、もう1年前のことなので、悩んだことは覚えていますが、実際あまり深くは覚えていませんが……。
表紙はみずきさん。
少し重い内容なので、絵がとてもいいアクセントになりました。
変わらず楽しそうな絵。心が和む絵です。
みずきさん、ぜひこれからもよろしくです。
2018年作。