桜の花びらは、じっと待っていました。
じっとじっと。
静かに。
そして、心から。
桜の花びらが待っているのは、人間の男性です。
あれは2週間ほど前のことです。
他の花びらがきれいで可愛らしい花を咲かせていましたが、この花びらはまだ小さなつぼみだったので、とても落ち込んでいました。
そんな時、カメラを持った若い男性が現れ、つぼみを励まし、キスをしてくれたのです。
そして、男性は、
「君が立派なレディになった頃、もう一度会いに来ます」
と言い、つぼみの写真を1枚撮って去っていきました。
やがて、そんなふたりに奇跡が起こりました。
数年前から、桜が好きになり、春になると、近所へ桜の撮影に出掛けます。
そのせいか、桜の物語もいくつか書いてきました。
そして、物語のアイディアも浮かびます。
今回は優しい愛のファンタジーなお話が無性に書きたくなって、書き上げた次第です。
そして、この作品、今年のゴールデンウイーク中に書きました。
2023年作。
「ブラックコーヒーの旨さがわからないようじゃ、まだまだ子供だな」
私の店のカウンターで、私の淹れたコーヒーを口にして、顔をしわくちゃにさせた孫の君。
「こんな苦いの、全然おいしくないよ」
口を尖らせる、負けず嫌いの君。
私にそっくりだ。
そんな君が病気になった。
それも決して治らない病気。
「おじいちゃんのブラックコーヒーが飲みたい……」
入院中の君から電話があった。
私は急いで病院に駆け付けた……。
これは原稿用紙で4枚程度のとても短い作品。
この時期、こういった短い作品をたくさん書いていました。
またいつかこういう短い作品を書いてみたいです。
ちなみに、個人的にはブラックコーヒーは毎日飲んでいて、もう中2の頃からずっとです。
初めの頃は子供だったので、胃が痛くなって病院に行ったこともありましたが、それからは別に何のこともなく飲み続けています。
バカ舌なので、好きな銘柄も味のこだわりも一切ありません。
コーヒーなら何でもいいです。
といいつつ、たった今もブラックコーヒーを飲みながら書いています。
2005年作。
平日の昼下がり。
静かな動物園のベンチに、1人の初老の男が佇んでいた。
そして、無造作にネクタイを緩め、窪んだ目で1匹の老猿をじっと見つめていた。
老猿もまた、弱々しい目で男を見つめていた。
久し振りだな。
こうしてゆっくり会えるのは、いつ以来だろうか……。
男は自分と似た境遇の老猿に静かに語りかけた……。
これはかなり古い作品。
短編小説にした後でラジオドラマにして応募したこともあるので、当時の自分にとっては何となく気になる作品だったのでしょう。
ただ、手書きで書いたとされるオリジナルの短編小説が見つからず、今回リメイクしました。
ん~、かなり渋い作品だな。
1998年(?)作。