あの日も雨が降っていた。
君は覚えているかい、あの日のことを。
僕達は小学校の同級生。君はクラスで1番可愛くて、ピアノが弾けて、運動もできて、勉強もできた。
それに対して、僕はというと、運動も勉強も苦手。だから、君を好きだと気付いても、劣等感だけが濃い霧のように僕を覆いつくしたんだ。
僕は君が好きだった。本当に誰よりも好きだったんだ。それなのに……。
そして、たくさんの月日を経て、僕達は偶然に故郷の神社の盆踊りで再会した。
浴衣姿で薄化粧の君は誰よりも美しかった……。
この作品は初恋を描いた作品。
誰でもありますよねえ。
勿論私にも。
なんやかんやと言って、その後好きになった人も何人か顔が似ていたりするんですよねえ、みなさん。
うん、うん。
2007年作。
昔、ここには高い壁があってな。2つの国に分断されていたんだ。
壁はそれこそ高層ビルほどの高さで、険しい岸壁のようなコンクリートの塀だった。
そして、ちょうどこの辺りに入り口があって、唯一両国が通じる門があった。
WALL GATE(ウォール・ゲート)。
ここを知る者にはそう呼ばれていた……。
旅に出た。
ヨーロッパにある歴史的な古い街だ。
ここを訪れて壁を見上げていたら、1人の老人に声を掛けられた。
そして、老人は旅人の私を見るなり、昔話を始めた。目から涙をこぼしながら……。
「旅に出たシリーズ」の第5弾。
これは最近の作品。
あっと、別にこれはベルリンの壁のことじゃないですよ。
壁は他にもたくさんあるそうですから。
あくまで空想の世界です。
2020年作。
私は気が進まなかった。
10年振りに歩く故郷の道も、懐かしさよりも知り合いと遭遇したらどうしようと考えるだけで、自然と歩調が速くなるのが自分でもわかった。
父が死んだ。60そこそこだ。病名は心筋梗塞。倒れてすぐに父は他界した。
叔母から連絡を受けた私は、父の遺産相続のことで故郷に戻ったのだ。
そして、夫と別居中の妹、軽度の知的障がいの弟との久し振りの再会。
父の遺産はわずかな金額しかなかった。
そして、その理由は父の、私達子供に対するある想いからだった……。
幼い頃の父親からのDVで、故郷を離れた「私」のお話。
こうして昔の作品を読んでみると、その後のストーリーに類似する点もあって、相関図ができるんじゃないかとも思います。
で、改めて思います。
随分たくさん書いてきたなあ、と。
2005年作。