ある街の駅前商店街から裏通りに入ったところにある古い雑居ビル。
丈夫なツタが外壁を遠慮なく覆っている薄暗いこのビルの2階に、へぼ将棋クラブがあります。
現在このクラブを運営しているのが、大学生のタモツさん。
運営と言っても、掃除をしたり、店番をしたり、注文を受けた食事を作ったり、たまに相手がいない人がいた場合は一緒に将棋を指したりします。
タモツさんは将棋は大好きなのですが、めっぽう弱いです。
それでも、対局中に様々な悩みを抱える相手にさりげなく言葉を告げます。そして、それが心に深く残るような素敵な言葉で、誰もが救われた気分になります。何となく心を温めてくれるような感じで。
決して押しつけがましくなく、ぽつりと呟くように。
だから、タモツさんと対局を終えると、誰もが心を洗われた気分になります。
この日、おやつの時間を少し過ぎた頃、1人の男の子がへぼ将棋クラブにやってきました。
男の子の名前は戸成歩。
歩君は数時間前にお父さんとケンカをして、家を飛び出してきました。
お父さんに内緒で、」将棋の駒を作っているのがバレて、玄関で激しく𠮟られたのです。
歩君のおじいさんは有名な将棋の駒師です。
歩君もおじいさんと同じ駒師になりたいのですが、お父さんとおじいさんは長年犬猿の仲でした。
だから、認めてくれるはずがありません。
「一緒に将棋を指しませんか?」
そんな落ち込んで、、どうしていいのかわからず涙ぐんでいる歩君に、タモツさんは声をかけました。
いつものように優しく微笑みながら……。
今回は将棋についての物語です。
将棋は弱いですが、かなり好きです。
毎日のようにネットで対戦するくらいですから。
まっ、負けの方が多いですが。
やはり負けると悔しいのですが、ついついやってしまう。
ちなみに、小学生の時、私の将棋を教えてくれたのはコヨーテ君です。
今では私の作品の表紙の写真を何度も撮ってくれる私専属の写真家です。
コヨーテ君、またいつか将棋しょうね。
2020年作。