あなたが最期にしたいこと……。
私の仕事は末期患者がこの世に思い残すことのないように、その最期の望みを叶えてあげることだ。
その仕事内容から、あまりよく思われていないが、私はこの仕事を誇りに思っている。
そんなある日、一人息子のシュンタが私に仕事がないのを可哀想に思ったのか、公園の掲示板に無断でチラシを貼っていたところ、偶然コワモテの智也さんと出会い、声を掛けられた。
智也さんは60代後半で末期ガンであるばかりでなく、重い記憶障害で昔の記憶のほとんどを失っていた。家族もなく、近くのカガミ総合病院に入院していたが、暇を持て余して、病院を抜け出してここにきたのだ。
そんな智也さんに対し、看護師のコナツさんはなぜか冷たくて、2人は顔を合わせる度に派手な口喧嘩をしていた。
「俺の人生を調べてほしい」
智也さんから仕事を依頼された私は、マンションに残された唯一の手掛かりである古い運転免許証に記載されている住所を訪ねて調査した。
岩手、そして東京……。
しかし、智也さんの評判はすこぶる悪く、刑務所に入り、故郷を追われ、東京でヤクザになったことが明らかになった。
そんな智也さんだったが、かつて愛する女性がいて、ヤクザを辞めた事実も明らかになった。
しかし、ヤクザの抗争が激化し、娘も生まれ幸せな月日を送っていた智也さんにも、やがて悪の手が忍び寄ってきて……。
今回はいつもより少し長い作品です。
で、ちょっと前の作品。
まだワープロを使っていた頃の作品です。
だから、一旦打ち出して、パソコンに入力するのが大変でした。そういうソフトがあるのですが、なぜか起動しないので……。
このところ重いテーマの作品が続いています。
さて、作品についてですが、ラストはいつのように、ありそうでなかったような、心が和むオチになっています。
あなたが最期にしたいこと……。
ん~、自分はどうだろう。
好きな人の傍で、書きものをしながら死にたいなあ。
ハハハハハ……。
2012年作。