洋菓子屋「菊屋」のおはぎ               (2016年8月出版)

 洋菓子屋「菊屋」が約100年の歴史に幕を下ろした。

 3代目の店主・福太郎さんは最後の客を見送ると、のれんを外し、店の中に入り、椅子に重い腰を下ろした。

 考えて考えて出した結論だったが、やはり店を閉めるとなると、気が滅入る。

 特に、この店を開いたじい様には申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

 そこへ6歳になる孫のつむぐが現れた。

 福太郎さんが孫に何が食べたいか尋ねると、つむぐは迷わず「おはぎ」と答えた。

 つむぐは店のおはぎが大好きだった。

 でも、いつも抱いていたふとした疑問。

 どうしてここは洋菓子屋なのに、いつも和菓子のおはぎが置いてあるんだろう……。

 そして、そのことを思い切って尋ねてみた。

 すると、福太郎さんは語りだした。

 じい様のこと。

 じい様の母親の菊さんのこと。

 じい様の東京での修業時代のこと。

 じい様がイギリスに渡って、大活躍したこと。

 そして、なぜ洋菓子屋なのに、おはぎが置かれるようになったのかを……。 


 今回はおはぎが題材です。

 「あんこ」好きなら誰しもが、「ケーキ屋さんにも、あんこ物がたくさんあったらいいのに」と思うはず。

 えっ、私だけ?

 そんなはずでは……。

 ま、とにかくそれが物語を作るヒントになりました。

 今回も結構歴史を勉強しました。

 でも、言葉にしろ、表現にしろ、そのままだと読みにくいところもあるので、そこは物語の邪魔をしないように心掛けました。

 夏休み、多くの子供たちに読んでもらいたいと思い、今月は早めの出版としました。 

 2010年作。