洋菓子屋「菊屋」が約100年の歴史に幕を下ろした。
3代目の店主・福太郎さんは最後の客を見送ると、のれんを外し、店の中に入り、椅子に重い腰を下ろした。
考えて考えて出した結論だったが、やはり店を閉めるとなると、気が滅入る。
特に、この店を開いたじい様には申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
そこへ6歳になる孫のつむぐが現れた。
福太郎さんが孫に何が食べたいか尋ねると、つむぐは迷わず「おはぎ」と答えた。
つむぐは店のおはぎが大好きだった。
でも、いつも抱いていたふとした疑問。
どうしてここは洋菓子屋なのに、いつも和菓子のおはぎが置いてあるんだろう……。
そして、そのことを思い切って尋ねてみた。
すると、福太郎さんは語りだした。
じい様のこと。
じい様の母親の菊さんのこと。
じい様の東京での修業時代のこと。
じい様がイギリスに渡って、大活躍したこと。
そして、なぜ洋菓子屋なのに、おはぎが置かれるようになったのかを……。
今回はおはぎが題材です。
「あんこ」好きなら誰しもが、「ケーキ屋さんにも、あんこ物がたくさんあったらいいのに」と思うはず。
えっ、私だけ?
そんなはずでは……。
ま、とにかくそれが物語を作るヒントになりました。
今回も結構歴史を勉強しました。
でも、言葉にしろ、表現にしろ、そのままだと読みにくいところもあるので、そこは物語の邪魔をしないように心掛けました。
夏休み、多くの子供たちに読んでもらいたいと思い、今月は早めの出版としました。
2010年作。