かつてムジャキな子供だった人達への童話14(2022年3月出版)

ふたごっこ

 あるお母さんの大きなおなかの中に、ふたごの男の子がいました。

「おい、今日からぼくがお兄さんになるから」

 ちょっとだけ大きい子が言いました。

「いいけど、どうして?」

 ちょっとだけ小さい子が言いました。

「ふたごは大きい方がお兄さんになるって、決まっているんだよ。外の世界では常識さ」

「へえ、そうなんだ」

「だから、これからはぼくの言うことをちゃんと聞くこと」

「は~い」

 そんな仲良しふたごっこのお話。


 知り合いにもふたごがいますが、見比べるとやっぱりおもしろいです。

 顔が似てたり、似てなかったり、性格が似てたり、違ったり。

 でも、お互いに通じ合っているんですよね。

 おもしろいほどに。

 ふたごが登場するお話を書いたのは今のところこれだけです。

 ちょっとふざけたお話です。

 2004年作。

モクモクさんのハンモック

 ポコポコ山の桜の木に、モクモクさんという1ぴきのくもが住んでいました。

 モクモクさんは毎日木の枝にくもの巣をはっていますが、なかなかえものがかかりません。

「あ~あ、どうしてぼくの巣にはえものがかからないんだろう。ダメだなあ、ぼくは。これじゃ、くも失格だよ」

 そんな落ち込むモクモクさんに、遊びに来たチョウチョさんが言いました。

「だって、モクモクさんのくもの巣、赤や黄色や青や緑色して目立つんだもん」

 そうなんです。

 モクモクさんのくもの巣は、とてもカラフルで色鮮やかなんです。とってもきれいなんです。だから、目立つんです。

 チョウチョさんにハンモックを作ってほしいと頼まれたモクモクさんでしたが、やがてそれが大評判になって……。


 くもの糸が透明じゃなかったら、どうなるんだろう。

 そんな発想から生まれたお話です。

 何か自分らしい作品です。

 今から20年以上の作品かあ……。

 書いた記憶はありますが、どういう気持ちで書いたかは、正直覚えていません……。

 1999年作。

海色のイルカ

 大学教授で海洋生物学者で環境学者のお父さんは、いつも世界中の海を調査していて、家にはめったにいなかった。

 でも、家にいる時は、必ず僕を連れてお風呂に入り、海での珍しい話をしてくれた。

 南の海には、空を飛ぶクジラがいるとか……。

 空に虹がかかると、海が七色に変わるとか……。

 海では、魚の運動会が開催されているとか……。

 中でも僕が大好きだったのが、海色のイルカの話。

 そんなお父さんが亡くなって、僕の家族の生活が一変した。

 そして、学校でも家でも居場所をなくした僕は、嵐の中、お父さんの遺灰を撒いた海に行った……。


 この作品は、某児童文学雑誌で優秀作品になれませんでしたが、幸い候補として名前がクレジットされたものです。

 嬉しかったなあ。

 当時はとにかく賞が欲しくて欲しくてたまらなかった頃だったので、年に1つ2つこうしたことがあると、本当に嬉しかったです。

 で、また頑張ろうって思えたんです。

 周囲には作品を書いて投稿していることを言っていませんでしたから、当然励ましてくれる人もいなかった。

 その中で、年に10~20作品を書いて、たくさんの作品を応募していました。

 ま、当然その度毎に打ち負かされて、相当落ち込むわけですが。

 なので、名前だけでも掲載されることはとても嬉しかったんです。

 そんなことを思い出しました。

 内容は児童文学にしては、とても重いお話です。

 2009年作。

ヤドカリさんのにじ

 南の海に、1ぴきのヤドカリさんが住んでいました。

 ヤドカリさんは洋服屋さんです。

 とっても派手でおしゃれな服ばかり作っています。

 だから、お店はいつも繫盛していて、毎日がとても忙しいです。

 南の海のオサカナさんたちが色鮮やかなのは、みんな、ヤドカリさんの洋服を着ているからです。

 でも、最近大空にうかぶ大きな大きなクモさんに悲しいことがあって、ずっと泣いているので、雨が降り続いています。

 そのせいか、海の水がにごって、せっかくのヤドカリさんの服がすっかり台なしです。

 そして、クモさんを泣きやませたヤドカリさんのいいアィデアとは……。


 

 ニモもそうですが、南の海の海洋生物はどうしてカラフルなんだろう……。

 そんな発想から生まれた作品。

 今もそうなんですが、そんなことばっかり考えています。

 でも、それが結構楽しんです。

 でも、それを1つの作品にするのがかなり大変なんです。

 頭を悩ますんです。

 ま、好きでやっているのでいいのですが。

 2003年作。