大人のための小さな物語9                (2015年2月出版)(2018年2月再出版)(2019年4月再々出版)

少女に恋した落ちこぼれの天使

 落ちこぼれの天使がいました。

 とても気が小さくて、引っ込み思案。

 弱虫な天使です。

 その天使が薄幸の少女に恋をしました。

 青年に姿を変えた天使は、どんな時も少女を励まし続けました。

 そして、誓いました。

 どんなことがあっても、僕がこの子を守ってあげる、と……。


 落ちこぼれの天使と薄幸の少女の物語。

 少女は青年に姿を変えた天使に心を開き、いろいろなことを相談します。初恋のことも……。

 天使は時に傷つきながらも、無償の愛で少女を支えます。

 でも、やがて2人に別れが訪れます。

 そして、再会……。

 2006年完成。

瓦礫の中で親子げんか

 旅に出た。

 西アジアのまだ内戦が続く地域だ。

 空腹の私は、1軒の食堂にたどり着いた。

 しかし、店の前では、父と息子が激しい口論をしていた……。


 「旅に出た」の第3弾。

 親子は内戦についてそれぞれの立場で熱く語ります。

 でも、どんなに対立しても、そこはやはり親子です。

 ラストの息子の行動が全てのような気がします。

 2014年完成。

ほおず(づ)き夜

 ベランダに、ほおずきが立派な実を付けた鉢が置いてある。きっと妻が育てたのだろう。妻はほおずきが好きだから。亡くなった母と同じで。

 

 母ちゃんのところへいこうか……。

 子供の頃、酔って家に帰ってきた父は、私を起こしてこう言った。


 最愛の妻を亡くした父とその息子とのお話です。

 「ほおずき」なのか、「ほおづき」なのかは、物語を読んでもらえればわかります。 

 小学生の頃、よく学校帰りに、わざわざ茂みの中に入り、木の実や果物をとって食べながら帰りました。

 田舎でしたので。

 赤いほおずきも食べましたねえ。口の中でコロコロ転がしながら。

 で、歯を立てて噛むと、一気に酸味が口いっぱいに広がりました。 

 2014年完成。