ここは「あめ屋」。
手作りの傘や雨具などを売っている雨の専門店です。
一応、今年で創業200年にもなる由緒正しい老舗のお店です。
現在、8代目店主のすずさんがたった一人でお店を切り盛りしています。
すずさんは25歳と若いのですが、職人としての優れた技術や抜群のセンスを持ち合わせています。
ただちょっと天然というか、変わっているところがありまして……。
さて、空が我慢できなくて、とうとう小雨が降ってきました。
お店から出てきたすずさんは、雨空を仰ぎ見て、店の前の椅子に大きなアマガエルの置き物を乗せました。
「あめ屋」が営業開始の合図です。
今日は一体どんなお客さんがやってくるのやら。
楽しみ、楽しみ。
「やれやれ、遂に曇り空も耐え切れなかったか……」
池永さんは70代後半の男性です。
今日は亡くなった奥さんの月命日で、自宅から2時間かけてわざわざお墓参りにやってきたのですが、生憎帰りのバスに乗り遅れ、タクシーも拾えず、仕方なく墓地から駅まで歩こうとしたところ、雨に見舞われたのです。
そんな池永さんの目の前に、優しい灯りが映りました。
そこには、ログハウス調の平屋の建物がポツンと立っていて、「あめ屋」の看板が見えます。
一体、何の店だろう……。
そして、池永さんはまるで何かに導かれるように、店のドアを開けました。
「あめ屋」は雨専門店。
そして、雨が降っている時や雨が降りそうな時にしか店を開けません。
まっ、実際はそんなお店はありませんよね。
それにしても、これまでも「おもひで屋」、「かねこ工房」、「がんばれ本舗」、「ぴあの」、「不思議ミュージアム」、「よるの教室」など、珍しい職業やそれに携わっている人を描いてきました。
共通しているのは、やはりちょっと(?)変わった人達が主人公。
この作品の主人公のすずさんもしかり。
そして、これから発表していく作品もやはり……。
表紙はみずきさん。
可愛い絵を描いてくれました。
2018年作。