「母のおもい」
1998年出版
出版社 新風舎
絵 荒井美雪さん
出版社がなくなったので、現在どこにも売っていません……。
ある日、ゆうびん局に一通のちょっと変わった手紙が届きました。
S町 おむすびが丘 桜の木の下
ぼくのお母さんへ
ゆうびん局で働く人たちは、ただのいたずらだと言っていますが、シローさんはそうは思えません。
それで半ば意地になって、吹雪の中、手紙を届けることにしました。
ゆうびん配達のシローさんと息子を想う母ぎつねのお話です。
亡くなった父が郵便局で働いていたこともあり、この作品を作りました。
生前、酒に酔った時、「山奥に配達した時にキツネかタヌキが化けた人にだまされた」と話していたことが記憶にあって。
そんなことないですよねえ。
わたしは、パパと新しいママと一緒に海の近くのホテルにやってきた。
本当は来たくなかったけれど、パパが「どうしても」って言うから……。
一人で砂浜にいたわたしは、勇治君と知り合った。
勇治君は地元の小学校六年生で、私の二歳年上。漁師だったお父さんは海で行方不明になっていた。
そんな勇治君となぜか気が合って、私たちは一緒に過ごした。
でも、ささいなことでケンカして、仲直りをしないでままその地を離れた……。
実はこの本の帯文には次のように書かれています。
おとなには おとなの考えがあるけれど こどもにも こどもの考えがあります。
おとなも こどもも なやみがあって 笑ったり 泣いたり しています。
ズバリこの作品のテーマのように思います。
最後はやはりハッピーエンドで終わっています。
小学生の健司と道夫の兄弟は、夏休みを利用して、祖父母の住む山間の村を訪れました。
そして、アユ釣りをしたり、花火をしたり、スイカやとうもろこしを食べたり、昆虫採集をしたりと、普段味わうことができない田舎での生活を満喫しました。
ところが、両親が離婚するという知らせが届いて、二人は夜遅くに山の神様がいる神社にお願いしに行きました。
なんとか父と母が仲直りできるようにと……。
時として、子供の方が大人よりも現実を素直に受け止めて対処できる柔軟性と適応力があります。
それが子供達が持っている強さの一つのような気がします。
子供の頃の記憶を思い出して書いた物語です。
もっとも、自分自身はアウトドア派ではなかったような気がします。
かつて人々がやさしさと思いやりを忘れ、お金や欲ばかりをむさぼり、生き物を殺したり、自然をこわしたりしたために、神様がお怒りになり、この国を雪におおわれる国にしました。
少女のミキは犬のタローとふたりで、山の中腹で小さなレストランを営んでいました。
ある吹雪の夜、一人の男がレストランに現れました。男は自ら「旅をしながら絵を描いている者です」と告げて、そのまま倒れてしまいました。
その後、体調が戻った男はしばらくの間、ミキの元にやっかいになり、絵を描きます。
そして、ミキも男に対して密かな恋心を抱くのですが……。
やがて、二人には別れが訪れます。
とても地味な作品ですが、そのラストシーンが浮かんだ時は、とても嬉しかったような記憶があります。
切ない別れ。
少女が成長するためにも、必要な別れ。
そう解釈してくれると、嬉しいのですが……。
夏休みのある日、友達と神社でかくれんぼをしていたわたる君は、急な林の中の大木の横に、小さなほら穴を見つけて、中に隠れました。
中は真っ暗ですが意外と広くて、思わずわたる君は居眠りをしてしまいました。
ズドドーンッ!
突然、地面がゆれるほどの爆音が聞こえたかと思うと、一人の少年がほら穴に入ってきました。
少年の名前はワタル君。
そして、驚いたことに、ここは防空壕で、今は戦争中だと言うのです。
そうです。わたる君はタイムスリップしてしまったのです。
時空をこえて、親友となった二人の少年。
戦争は悲劇性を持ち、暗い影を落とします。
しかし、当時子供達は健気に、そして元気に遊んで、毎日を過ごしていたと思います。
そういう悲しみだけではない、もう一面を描きたくて書きました。