大人のための小さな物語5      (2017年10月出版)

ぼくは宇宙人

 ぼくは、ちょっと変わってる。

 自分ではそう思わないけど、みんながそう言う。

 どうしてだろう。

 ぼくはみんなとおんなじなのに。

 

 ある日、落ち込んでいるぼくに、パパが望遠鏡を買ってくれた。

 そして、言った。

「……実は、パパは宇宙人なんだ」

と。

「だから、お前はみんなと違うんだ。でも、気にするな。お前は宇宙人なんだから」

 そして、ギュッと抱きしめてくれた。


 かなり変わった男の子と父親とのお話です。

 その父親が本当かどうかわからないですが、「パパは宇宙人だ」と告げるんです。「ママにも内緒だぞ」と。

 でも、その一言で少年は変わります。

 そして、大人になって宇宙飛行士になるという物語。

 誰でも自分の人生を大きく変わった一言をもっていると思います。

 大抵、それが大人からの一言だったりします。

 だからこそ、大人の責任は重大だと思います。 

 2006年完成。

ユレル…

 ユレテル……。

 ベランダに干してある兄のワイシャツが、風で小さく揺れている。

 

 東京に住んでいた兄が死んだ。あまりに突然すぎて、悲しみに浸ることもできない。

 私は兄の遺品を整理するために、兄の住んでいたアパートに向かった。

 そして、たくさんの兄の知り合いと出会って、私の知らない兄を知った。


 もしも今自分が死んだらこうなるのかあ、と思いながら書いた作品です。

 勿論、作品中の「兄」とは趣味も性格もまったく違いますが。

 ほんとに?

 多分。

 と思う。

 2009年完成。

僕の大切な彼女たち

 僕の彼女のかすみ。

 今時の女子高生のさえちゃん。

 無口で引っ込み思案の月夜さん。

 そして、男っぽい性格だけど、寂しがり屋のヨウコさん。

 でも、4人は同じ女性。

 そう、僕の彼女は多重人格障害。

 

 かすみが倒れた。

 そんな僕に担当の精神科医が残酷な告知をした。 


 これはメルヘンチックな男女の作品となっています。

 実際こういうことはあり得ないと思いますが、それでも当時、優しく温かい恋愛の物語を作りたかったのでしょう。

 なぜかは知りませんが。

 2006年完成。