かつてムジャキな子供だった人達への童話1(2018年7月出版)

ネコ社長のまねきネコ工場

 世は不景気まっただ中。

 でも、ネコ社長のまねきネコ工場は今日も大いそがし。

 この工場で作られるまねきネコは、特にご利益があるということで人気があり、注文がさっとうしているのです。

 社長のネコさんは、ウッホッホ。

 いつもニヤニヤしながら、そろばんをはじいて、お金の計算をしています。

 ところがある日、工場が全焼してしまいました。

「ど、どうしよう。明日までにまねきネコを作らないと、会社がつぶれてしまう……」

 ネコ社長は考えた結果、一つのいい考えが浮かびました。

「そうだ。本物のネコたちに、まねきネコになってもらおう」


 子供にはちょっと難しいかもしれないけれど、大人には十分理解できる童話。

 子供は少し背伸びして、大人は昔の子供心を思い出す。

 そんな童話があればいいなあというのが、このシリーズを始めたきっかけです。

 

 この作品は、まねきネコになったのらネコたちと人間との交流を描いたものです。

 笑える作品です。たまにはこういう物語も無性に書きたくります。

 2007年完成。

石ころのうた

 ぼくは石ころ。

 まだ土の中にいて、外には一度も出たことないんだ。

 だから、人間でいうと、赤ちゃんと同じ。

 あ~あ。早く大人になって、外に出たいなあ。

 

 特別なことなんて何もない。

 そんなぼくの一生をつづった小さな物語です。


 石ころが地上に出て、様々なことを経験して成長し、やがて小さくなって土に戻る。

 道を歩いていた時、偶然に石ころを蹴って、何気なく拾い上げたことがこの作品を作るきっかけとなりました。

 カドがとれた石ころを見て、「こいつにもいろいろあったんだろうなあ」と思って。

 そう考えれば、人間とさほど変わんないな、と。

 2003年完成。

天使のワンピース

 コウさんはデザイナー兼ショップのオーナー。

 店にある洋服やTシャツ、バッグ、小物類は、全てコウさんがデザインして作ったものです。

 でも、開店して半年になりますが、お客さんはめったに現れません。

 そんなある夜、店に紛れ込んだ羽を痛めたチョウのオオムラサキに、コウさんはすてきな洋服を作ってあげました……。


 コウさんの店には、その後、病気の少女の父親が訪れて、娘のためにワンピースを注文します。

 そして、2人の天使も……。

 ちょっと悲しいお話ですが、自分自身も大好きな作品の1つです。

 2009年完成。