たけのこ学園         (2023年2月出版)

 ボサボサ先生は元小学校の先生。

 しかし、娘の舞子ちゃんを小児ガンで亡くして以来、ショックから心に大きな傷を負い、生きる希望も失って、先生の職を辞し、今は細々と工事現場で働いて暮らしています。

 そんなある日、叔父であり、難病に冒された子供達だけが入院している病院の院長先生から、今度病棟内に子供達のために教室を開校したいという話を聞かされました。

 教室は学校で勉強することはもちろん、音楽や美術やダンスや芝居や映画やパソコンや、とにかく子供達 が興味が持つことなら何でも学べることができて、ぜひその教室で先生をやってほしいということでした。

 ボサボサ先生は最初その申し出を断りましたが、院長先生が、

「毎日死と向き合っている子供達にいろいろな経験をさせて、生きている実感と明日への生きる希望と夢を与えたい。病気のことを一瞬でも忘れさせて、生きていてよかった、生まれてきてよかったと笑顔を浮かべてもらいたい」

と熱心に語ったことに心を打たれ、その仕事を引き受けました。

 教室の名前は「たけのこ学園」。子供達にすくすく育ってもらいたいと、院長先生が名付けました。

 教室はたくさんの子供達によって、笑顔と明るさが絶えない場所になりました。

 そして、タクローもみゆきも、そうした子供達の1人でした……。


  この作品も随分古いですねえ。

 多分難病の子供達が入院している病院のことをテレビか新聞か雑誌で知って、思い立って書いたのだと思います。詳しいことは覚えていません。何せ約20年前のものなので。

 ただ今でもそうですが、命にまつわる長編の物語を書いていると、その間ずっとやはり心が沈んだままになります。それが2、3月続くと、やっぱり……。

 だから、そういう作品を書くと決めた時は相当な覚悟がいりますし、何度も自問自答します。覚悟を問います。それは今でも変わりません。

 主人公の先生は、髪がボサボサで、服なんかもヨレヨレシワシワ。不器用で無頓着。私の作品の登場人物にとても多いキャラクターです。ま、私自身も似たようなもんなので、そうなるのかしら。 

 2004年作。