ある冬の日、8歳の女の子・マリーからサンタクロースのおじいさんに手紙が届きました。
そこには、今度難しい目の手術をすることになり、その前にどうしてももう一度大好きなチューリップのお花畑を見たい、と書いてありました。
そして、困り果てたサンタさんがひらめいたいいアイディアとは……。
本当に偶然ですが、今回の4作品は全て20年ほど前のものになりました。
特にこの作品は古いですねえ。
多分、童話を書き始めの頃の作品だと思います。
「こんな作品描いてたなあ」
昨年、コロナ禍で自粛期間中、初めて過去の作品と再会する時間がありましたが、久し振りに会う作品はとても新鮮で、思わずそう呟きました。
オチは多少悩んだのかなとは思いますが、内容的にもTHE童話というスタンダードな作品だと思います。
1996年作。
第2次世界大戦中の、ある南ヨーロッパにある小さな孤島の村に、黒いハトが住んでいました。
ところが、黒いハトは不吉の象徴。災いをもたらす悪魔の使いという言い伝えがありましたので、村人は黒いハトを見つけると、ホウキで追い回したり、石を投げ付けたりしました。
そんな黒いハトを見兼ねて、いつも気の毒そうに世話をしているのが、丘の上に住むおじいさんでした。
ところが、ある日、ドイツのナチス軍が近くの孤島まで攻めてきたという知らせが舞い込んできて……。
古い迷信や言い伝えの中には、非科学的なものがあって、そのせいで大切な何かを見失ってしまっている。
それがこの作品で伝えたかったことです。
そして、大切な何かを失って、やっと真実が見えてくる。
悲劇的な作品ですが、このような作品は私にとっても必要な作品だと思います。
1999年作。
ある夜のことです。
おつきさまも、ぐっすりねむるころ。
あいちゃんが目を覚ますと、部屋の中でどうぶつのバクがおなかをおさえて、苦しそうにしていました。
まちで有名などうぶつのお医者さんであるあいちゃんのパパによると、どうやらゆめをたくさん食べすぎたからだそうです。
そして、バクのお口を大きくひらいて、ググっと手をつっこんで、とうめいなゆめの風船を1つ1つ取り出してみると……。
夢をたべるバクのお話はいくつか書きましたが、その中の1つ。
それにしても、バクは本当に夢を食べるのかしら。
そもそもなぜそんな説が生まれたのか。
今度調べてみたいと思います。
きっとバクは、「フン、勝手に人間が作ったデマだよ」と憤慨していることでしょう。
それとも、「昨日食べた夢はおいしかったなあ」と思っているか。
どっちにしろ、考えれば考えるほど楽しいですねえ。
1999年作。
ある寒い夜のこと。
たぬきのポンはきつねのコンに誘われて、人間の住む町の駅前にある小さな屋台にやってきました。
そこには、80歳くらいのおじいさんがいました。
おじいさんは目が悪いらしく、分厚いメガネをかけ、ふたりを人間の子供と見間違いました。
そして、ふたりはおじいさんをダマして、大好きなきつねうどんとたぬきそばを注文して食べ終わると、森でしか使われない動物コインを置いて、そそくさと帰りました。
2日後、おじいさんをダマしたことに心を痛めたポンが再びおじいさんの屋台を訪ねてみると……。
たぬきときつねのお話も、昔からの王道ですよね。
特に日本人は大好きです。
何かお話を作りやすいというか、親しみがあるというか、読んでいても安心感があるというか。
そして、人間を絡めると、自然とお話がおもしろくなっていきます。
これはもう物語の化学反応というか、魔法の様なものです。
だからこそ、練りに練ったオチは必要ないような気がします。
1998年。