大人のための中くらいの物語4               (2015年9月出版・2020年1月再出版)

帰ってこい

 ボクは現実から逃げた。

 現実に背を向けるなんて、最低の人間だ。その先は人の視線に気を病んで、悔いて自暴自棄になり、堕ちていくしかない。

 そんなこと、わかっているはずなのに、ボクは現実から逃げた。

 あおいの妊娠。

 シナリオライターになる夢の挫折。

 ボクはその全てから逃げた。

 ある夜、ボクは公園でホームレスのおっさんと出会った。

 そして、一緒に暮らすようになって……。


 これは、大学生の「ボク」とホームレスのおっさんとの短い交流を描いたお話。

 おっさんの切ない過去。

 1万円札に書かれた数字の謎。

 そして、別れ。

 タイトルの「帰ってこい」は、主人公の母親が電話で告げた言葉です。

 2008年完成。

さまようゆうれい

 ふと気付くと、私は見知らぬ人通りの多い繁華街を歩いていた。

 一体ここはどこなのだろうか。

 そして、私は誰なのか。

 ……そうだ、思い出した。

 私は死んだんだ……。

 

 それから、この世を満喫していた私だったが、ひょんなことから屋台の喫茶店のマスターをすることになった。

 それでも、なぜかコーヒー作りに精通していて……。


 死んでから、30年もこの世をさまよい続けていた「私」のお話。

 その「私」が大人になった息子と偶然に再会します。

 息子とは子供の時に離婚して以来、離れて暮らしていました。

 その息子も厳しい現実の中で一生懸命に生きていました……。

 2015年完成。