ボクにはなんにもない。
オカネもないし、クルマもない。
人にジマンできるものは、何一つない。
明るいミライだって、ない。かもしれない。
それでも、キミは、「ボクがいい」という。
「ずっといっしょにいたい」という。
「なんにもいらないから、1日3回笑わせて」と、ほほえみながら言うキミ。
やがて、ボクとキミの間に男の子が生まれた。
名前は、にこ。
ずっとずっと3人でいっしょにいられると思っていた。
それなのに……。
ちょっと変わった、でも純粋な心の持ち主である男性とその家族のお話。
短くて簡単な文で書いた大人の童話です。
最後の「ボク」の、子供に対するメッセージ。それがこの作品のテーマです。
2009年作。
「席、空いてるか」
今日は私の結婚式。
私が控え室でドレスに着替えていると、突然タキシード姿の父が現れた。母が言った通りに。
でも、その父は2年前、すでに亡くなっていた……。
これは、亡くなった父が楽しみにしていた娘の結婚式にやってきたというお話。
きっと目には見えないだけで、こういうことはあり得るのでしょう。
あの世にいても、出席したくて仕方がないでしょうから。
そして、その父の心情を妻が十分理解していた点が新しいかな、と。
最後に妻がすでに亡くなっているのにもかかわらず、父の体を想い、急いで買いに行ったものもありかなと思っています。
2008年作。
ネズミ大学のチュー教授は哲学のみならず、経済学や純文学など、多くの書物を著した天才だった。
学問に意欲があれば、どんな学生でも分け隔てなく、自分の英知と経験を教えてくれた教授。
そんな尊敬してやまない稀有な教授だったが、別れは誰もが予期せぬ形で訪れた。
教授、あなたはどうして私達との別れを選択したのですか?
ふざけているのか、真面目なのか。
いえ、ちゃんと真面目に書きました。
「はじめに」とある通り、これはプロローグです。
すでに本編は半分ほど出来ています。
いつか発表する機会があれば。
2016年作。
一人息子の私を育てるために、苦労に苦労を重ねた母。
長い年月が経って、その母も認知症になり、今は介護施設にいる。
ある日、その母からピカピカの黒のランドセルが届いた。
今度小学校に入学する子供は大喜び。
しかし、そのランドセルに込められた本当の意味は、私と母の遠い過去の苦い記憶にあった。
たとえ過去の記憶が曖昧になったとしても、親が子を想う気持ちはどこかで持ち続けているもの。
そういう作品です。
そして、電話でのやり取りに、この親子の絆がわかると思います。
徐々に母親に対する呼び方も変わっていきます。
2003年作。