かつてムジャキな子供だった人達への童話10(2021年3月出版)

妖精と青い鳥

 かつて腕のいいオーダーメイドの洋服屋を営んでいたおじいさんは、5歳の子供を病気で亡くしてからは、そのショックで仕事を辞めました。

 そのおじいさんの趣味は野鳥の観察。暇さえあれば、近くの森に行き、野鳥の写真を撮ったり、鳥の鳴き声を録音したりしました。

 おじいさんは理由があって、青い鳥を探しています。

 ある夜、おじいさんがテラスで森で録音したカセットテープを聴いていると、女の子の楽し気な会話が聞こえてきました。

「ねえ、明日のパーティーに行く?」

「明日の夜、噴水公園でだよね」

「うん。一緒に行こう?」

「いいよ」

 あの森には、誰もいなかったはずなのに……。

 不思議に思ったおじいさんは、次の日の夜に行ってみると、そこには妖精たちがたくさんいました……。 


 妖精や天使のお話は今までたくさん書いてきました。

 で、このお話はその妖精の会話を偶然に録音してしまったというもの。

 でも、何かありそうですよねえ。そんなことって。

 ありえない会話が聞こえてきたりだとか。

 怖いのは嫌ですが、妖精や天使の会話は聞いてみたい気がします。

 2006年作。

お地蔵さんのお友達

 雪がしんしんと降っています。

 そんな中、お地蔵さんがひとり、道ばたにぽつんと立っています。

「お地蔵さん、ひとりぼっちでかわいそう」

 ももちゃんは友達のあかねちゃんと一緒に、お地蔵さんに友達を作ってあげたくて、たくさんの雪だるまを作りました。

 その夜、町中にはお地蔵さんと雪だるまの楽しそうな笑い声が聞こえてきました。

 やがて、春が近づき、あたたかくなると、雪だるまはとけて、お地蔵さんはまたひとりぼっちになってしまいました……。 


 お地蔵さんなんて、今時珍しいですよね。もう昔話の世界になってしまいました。

 でも、小さい頃田舎で何度か見かけたことがあります。

 そんなことをふと思い出して書いたのだと思います。

 2003年作。

悪魔の子ポーグ

 ポーグは悪魔の子。でも、よい心を持っていて、気が小さくおひとよし。いつもお兄さんたちのように人間にイタズラをしようとするのですが、失敗ばかりのドジな悪魔です。

やれやれ。ポーグ、パパは将来お前が立派な悪魔になれるかどうか心配だよ」

 そんなポーグに、いつもパパはそう言って、ため息をつくのでした。

 ある日、ポーグは公園に行きました。そして、若くて貧しい画家がトイレに行っているすきに、彼が描いた絵に落書きをしました。

「やったー! これで今日はパパにほめてもらえるぞ」

 ポーグは家路に向かいながら、笑顔で喜びました。

 でも、その絵に何と奇跡が起こって……。


 この作品は本当に古い。

 書いたこともすっかり忘れていましたが、去年の自粛期間中に無事発見しました。

 シリーズ化も考えていましたが、そのままほったらかしになってしまった作品。

 今回やっと発表することが出来ました。

 めでたし、めでたし。

 きっとオチでかなり悩んだと思います。忘れましたが。

 1998年作。

森のメガネ屋さん

 ななちゃんは大好きな森の散歩中に、メガネザルとぶつかってメガネを落とし、レンズを割ってしまいました。

 そして、メガネザルに連れられて、森のメガネ屋さんに行きました。

 そこにはたくさんの種類の動物たちの珍しいメガネがありました。

 店主のメガネをかけたウサギは、ななちゃんのためにピンク色したかわいいメガネを持ってきました。

 それは明日何が起こるのかも、宝くじの当選番号さえもわかるという、未来が見えるメガネでした……。


 普段メガネをかけている私だからこそ、思い浮かんだ作品。

 きっと動物だって視力が悪くなって、メガネがあったら欲しいはずだ。

 そう思って書いた作品です。

 未来が見えるメガネか……。

 いいな。

 2010年作。