……ねえ、運転手さん。
はい。
私、誰だかわかる?
冬の間だけ東京に出稼ぎに来て深夜タクシーの運転手をしている初老の男の車に、かなりお酒に酔った1人の若い女性が乗車した。
どことなく陰のあるその女性は、自らAV女優だと名乗った。
そして、早朝の撮影場所まで行ってほしいと告げた。
純朴な田舎の運転手と家族のためにやむなくAV女優となった女性、そして偶然に出会ったファンとの心の交流……。
全てセリフだけの実験的小説「タクシードライバー」の第2弾。
「せっかくネットによって自由なことができるのだから、本の出版では絶対にできないことをやってみよう」と思い、書いてみた作品。「タクシードライバー1」同様、ウシシの気持ちで書いてみました。
以前出版した「人魚の耳」はできるだけ余計なことを省いて書いたシナリオみたいな小説。
今後もそんな挑戦はしたいと思っています。
せっかくのネット配信なので。
つい最近の作品だと思っていたら違った。2014年作。
勤めていた百貨店が閉店し、失業した私。
人生2度目の就職活動を始めたが、10社目の不採用通知をもらった後は、1日の大半をアパートの部屋に閉じこもる生活を送っていた。
そして、自分の人生を顧みた。
私の人生。
私のこと。
去年亡くなった母のこと。
幼い頃に離婚して離れ離れとなった父のこと。
そして、胸の奥にしまっている夢のこと。
ある日、私は1本の電話で目が覚めた。
「私、弁護士の橋本と申しますが、亡くなられたお父様の遺言の件でお電話しました」
はっ?
お父さん?
亡くなった?
遺言?
その後、橋本さんに連れられて訪れた場所。
それは私の夢。
そして、父の夢の場所だった……。
それこそオーソドックスな作品。
内容的にもスタンダードというか。王道というか。
でも、自分の中ではそれが珍しくて、たま~に書きたくなるジャンル。
書いていても読み直しても安心、安全。
後は最後のオチを考えながら、パズルを組み合わせるようにストーリーを組み立てるだけ。
それが難しいけど、楽しかったりするわけでして……。
そんなこんなで何十年も続けていますです、はい。
2018年作。