大人のための中くらいの物語5    (2020年3月出版)

タクシードライバー2

 ……ねえ、運転手さん。

 はい。

 私、誰だかわかる?

 

 冬の間だけ東京に出稼ぎに来て深夜タクシーの運転手をしている初老の男の車に、かなりお酒に酔った1人の若い女性が乗車した。

 どことなく陰のあるその女性は、自らAV女優だと名乗った。

 そして、早朝の撮影場所まで行ってほしいと告げた。

 純朴な田舎の運転手と家族のためにやむなくAV女優となった女性、そして偶然に出会ったファンとの心の交流……。


 全てセリフだけの実験的小説「タクシードライバー」の第2弾。

 「せっかくネットによって自由なことができるのだから、本の出版では絶対にできないことをやってみよう」と思い、書いてみた作品。「タクシードライバー1」同様、ウシシの気持ちで書いてみました。

 以前出版した「人魚の耳」はできるだけ余計なことを省いて書いたシナリオみたいな小説。

 今後もそんな挑戦はしたいと思っています。

 せっかくのネット配信なので。 

 つい最近の作品だと思っていたら違った。2014年作。

イチゴのショートケーキのカフェテリア

 勤めていた百貨店が閉店し、失業した私。

 人生2度目の就職活動を始めたが、10社目の不採用通知をもらった後は、1日の大半をアパートの部屋に閉じこもる生活を送っていた。

 そして、自分の人生を顧みた。

 私の人生。

 私のこと。

 去年亡くなった母のこと。

 幼い頃に離婚して離れ離れとなった父のこと。

 そして、胸の奥にしまっている夢のこと。

 

 ある日、私は1本の電話で目が覚めた。

「私、弁護士の橋本と申しますが、亡くなられたお父様の遺言の件でお電話しました」

 はっ?

 お父さん?

 亡くなった?

 遺言?

 その後、橋本さんに連れられて訪れた場所。

 それは私の夢。

 そして、父の夢の場所だった……。


 それこそオーソドックスな作品。

 内容的にもスタンダードというか。王道というか。

 でも、自分の中ではそれが珍しくて、たま~に書きたくなるジャンル。

 書いていても読み直しても安心、安全。

 後は最後のオチを考えながら、パズルを組み合わせるようにストーリーを組み立てるだけ。

 それが難しいけど、楽しかったりするわけでして……。

 そんなこんなで何十年も続けていますです、はい。  

 2018年作。