大人のための小さな物語1                          (2017年6月再出版)

ニボシ

 ニボシはノラねこ。私が落ち込んだり、泣いたりしていると、どこからともなくやってきて、ベランダに煮干しを1つ置いていってくれる。とっても優しいノラねこだ。そして、必要以上の馴れ合いや甘えを決して許さない、誇り高き孤高のノラねこでもあるのだ。

 でも、彼氏にふられた時は布団の中に潜り込んで、普段は決してしてくれないイチャイチャスリスリしてくれた。とってもとっても嬉しかった。

 そんなノラねこ・ニボシとOLの私の物語。


 考えてみると、子供向けなのか大人向けなのかわからないような原稿用紙10枚前後の作品がたくさんありました。

 それらをまとめて発表したいと思ったのが、このシリーズを始めたきかっけです。

 その際、電子書籍で気軽に読めるようにしようと、できるだけ難しい表現はやめました。

 これも、硬派なノラねこと平凡な一人暮らしのOLのお話です。なんとなくホッして、気が抜けるように微笑んでくれたらいいですね。

 2011年作。

 人の老人が砂浜に胡坐をかいたまま、じっと海を見つめている。

 老人には暗い過去があった。かつて漁師だった老人は、一人息子を海で亡くした。

 ある日、老人の元に1人の青年が現れた。そして、気さくな青年は寡黙な老人と2人だけの時間を過ごした。

 優しい時間だけが2人の間に流れた……。


 この作品は、度重なる不幸や病気により、すっかり心が壊れてしまった老人と人懐こい青年との束の間の時間を描いたものです。

 「ラストはいかにもお前らしいな」と友人に言われたことがありますが、どんな意味なのかな?

 ともかく短い作品ですが、ホッとするような優しい物語です。

 2007年作。 

看取りロボット

 決して死ぬことはないロボットと命に限りがある人間とのお話。

 ロボットは孤独なおばあさんに拾われて、一緒に暮らします。

 2人はいつも一緒。何をするのも一緒です。

 しかし、やがてそんな2人にも別れが訪れて……。


 この作品は、テレビで高齢者が会話型ロボットに優しく話しかけているのを観たのがきっかけで作りました。

 高齢者にとっては、ずっと傍にいて、言葉を掛けてくれたり、話を聞いてくれたりすれば、人間でもペットでもロボットでも同じなのでしょうね。

 人工知能を持った会話型ロボットは、今後もっと普及されることになるでしょう。

 2015年作。

僕が守ってあげる

「僕が守ってあげる」

 私は物心ついた時から、この言葉をずっと聞いてきた。落ち込んだり、災難がふりかかると、突然耳の奥から聞こえてくるのだ。

 そして、実際私は幼い頃からいろんな人に守られてきた。

 それなのに、27歳の私は、たちの悪い男に溺れて自殺未遂をしてしまった。上司に忠告されたのにも関わらず……。


 私達は誰もが、これまでに「誰かに、いや、何かに守られている」と感じたことがあると思います。困難な状況に追い詰められた時や強く念じた時とか。

 それが巷で言われるご先祖様なのか守護霊なのかはわかりませんが。

 そんなことを物語にしたらどうなるだろうと思って書いた作品です。

 2007年作。