かつてムジャキな子供だった人達への童話3         (2014年10月出版)(2019年4月再出版)

おかえり

 おかえり。

 おかえりなさい。

 つらかったでしょ。

 うれしかったよね。

 それ、ぜんぶぜんぶひっくるめて。

 おかえり。

 おかえりなさい……。


 詩のようですが、これも私の物語です。

 こういうのもたくさん書いています。

 とても短いので、今まで行き場所がありませんでしたが、見事電子書籍で発表できました。

 帰るところがあって、待ってくれる人がいる。

 とても幸せなことだと思います。

 2014年完成。

おねしょマン

 ぼくは時々おねしょをする。

 そして、その度にママにしかられる。

 ある夜、眠っていたぼくは、突然目が覚めた。

 いやな予感がして、パジャマのズボンにそっと手をのばしてみると……。

「あっ、またやっちゃった……」

 その時だった。

 突然、おねしょがふんわりと宙に浮いて、正義の味方おねしょマンが現れたのだった。


 おねしょマンは、おねしょをして落ち込んでいる男の子を励ますためにやってきます。

 そして今日も、子供たちのために、おねしょマンは頑張るのでした。

 これも、時々書きたい衝動にかられるくだけたお話です。

 2006年完成。

イイコト銀行

 最近、駅前に新しい銀行ができました。

 イイコトいっぱい銀行。

 イイコトをすると、イイコトシールがもらえて、それが10個たまると、誰かからイイコトをしてもらったり、お金や品物に換えることもできます。

 この銀行ができて以来、街中はたくさんのイイコトと優しさであふれました。

 ところが、ある夜、ドロボウが入って、イイコトいっぱい銀行はつぶれてしまいました。


 これはちょっと意地悪な作品ですね。

 善意を皮肉ったものですから。

 でも、ラストに登場する女の子の言葉が全てだと思いますし、そう思いたいです。

 1999年(?)完成。

桜、さくら

 丘の上の公園に、一本のソメイヨシノの木がありました。

 この街に住む人々は、ソメイヨシノが大好きでした。

 しかし、ソメイヨシノは自分の命がもう長くないことを知っていました。

 そして、最後の春、花びらがあと一枚になった時、ソメイヨシノの前に一人のおばあさんが現れました。


 これは桜の木と「さくら」というおばあさんのお話。

 60年振りに再会して、それぞれの60年を振り返りながら、一緒にゆったりとしたひと時を過ごします。

 とても優しい作品で、これを書き終えた時はとても嬉しかったと記憶しています。

 2010年完成。